診察も施術も、驚くほどスピーディーだった──美容医療の効率化が生むメリットと歪み

来院から施術終了まで、超スピーディ
「えっ、もう終わり…?」
初めて行った美容医療のクリニックで、
思わずそう感じたことがありました。
受付をして、問診票を書き、
医師の説明は数分。
あっという間に施術が始まり、
終わったころに、アフターケアや術後のコース誘導などもなく、
会計処理したら終了。
これは一体、私にとって便利な体験だったのか?
それとも、何かが足りなかった感覚だったのか?
あのとき感じたスピード感は、
今の美容医療に浸透している効率化の象徴だったのかもしれません。
私自身も、安さに惹かれたことがある
私が美容医療を受けるときに見るのは「価格面」
1万円台でできる施術、初回◯%オフの広告、
とにかく試してみたい気持ちが勝つと、
内容より価格を見て予約するケースもあります。
実際に行ってみると、
忙しい時間帯だったのか、
診療の時間配分がシビアになっていて、
スタッフ側のフロア管理にかなりの負担がかかっているようにも見えました。
結果として、私自身は「気づいたら終わっていた」ような感覚のまま、
口コミを書けるような大きな感動もなく、
何を感じていいか分からずに帰路についていたのを覚えています。
なぜ、現場がここまで急ぐようになったのか?
現場の医師や看護師に悪気があるわけではありません。
でも、診察単価が下がれば、数をこなさなければ経営は成り立たない。
・初診カウンセリング5分
・毎日20〜40名を診察
・同じ時間帯に何人も予約がかぶっている
そんな環境のなかで、丁寧な対応を保つことは、ほぼ不可能に近い。
つまり、「安く受けられる美容医療」は、
現場に時間を削れという圧力をかけて成立している構造かも知れません。
効率化がもたらす便利さと違和感
スピーディーに診てもらえる、待ち時間が少ない。
会計も事前決済。
それ自体は、忙しいビジネスマンや、子育て期の主婦にとって、
ありがたい面でもあります。
でもその一方で、センシティブな患者さんも居ます。
さんざん、他のクリニックで医師とコミュニケーションが取れず、
傷ついて居る方のお話を聞くと
・ちゃんと話を聞いてもらえなかった
・気になることが聞けなかった
・次にどうすればいいのか、分からないまま終わった
そんな置き去り感を抱える人も、決して少なくないはずです。
美容医療の早さに、安心を感じる人もいれば、不安を覚える人もいる。
どちらが正解という話ではないけれど、
「効率よく受けられる=良い医療」とは、言い切れない気がしています。
本来、美容医療は正解が一つじゃない世界。
治療の選び方や、医師との相性、時間をかけて向き合いたい人もいれば、
サクッと済ませたい人もいる。
でも今は、「安く・早く・たくさん診る」ことが前提になりすぎて、
その人にとってちょうどいい医療の形が見えにくくなっているのかもしれません。
スピード重視の構造が、いつの間にか「標準」になってしまっている。
その背景には、現場だけではどうにもできない、運営側の課題も見え隠れしています。
▶ 次回予告|運営に医療の哲学はあるか?
この構造は、現場だけの問題ではありません。
安さを優先する経営方針、非常勤医師ばかりで組まれたシフト、
そして「誰が責任者なのか分からない現場」。
そんな構造が、信頼の土台を揺るがしているのではという視点から、
次回は、美容医療の運営側の課題に切り込んでいきます。
次回【美容医療のリアル】なぜコンセプトのない現場が生まれるのか?

