美容医療業界で「残る理由」を作るには?──給与や待遇だけに頼らない定着戦略

給与を上げても、定着しない現実
美容医療業界では、
給与や待遇を改善してもスタッフが定着しないケースが少なくありません。
条件を良くしたはずなのに、短期間で辞めてしまう。
条件アップをきっかけに、
逆に他院からの引き抜きが増える──そんな話もよく耳にします。
現場では「給与を上げれば人は残る」というシンプルな発想が根強くありますが、
実際にはそれだけでは足りないことを、
多くの経営者や管理職が実感しているはずです。
給与や待遇だけでは足りない理由
条件改善は、短期的な満足度や採用力は確かに上げます。
しかし長期的な定着には直結しないのが業界のリアル。
なぜなら、
給与や待遇は他院がさらに条件を上げれば、簡単に逆転できる要素だからです。
実際に条件面は、他競合とつり合いを取るため、
給与面で圧倒的に差別化を図るのは難しいのが現実です。
「給料が高いから働く」職場は、裏を返せば「もっと高ければすぐ動く」職場。
こうした条件比較だけで動く人材が集まると、
職場の文化や信頼関係は育ちにくくなります。
結果として、働く意味ややりがいが条件の外に見つけられないスタッフが増え、
定着率が下がる悪循環に陥るのを沢山見てきました。
残る理由の本質は「条件以外の価値」
では、美容医療の現場でスタッフが長く働きたいと思う
「残る理由」とは何か、考えてみました。
条件以外で人が職場にとどまる要素には、次のようなものがあります。
- 明確なキャリアパスと成長実感
自分の技術や知識が年単位でどう成長していくのかが見える。 - スタッフ同士の信頼関係
助け合いや情報共有が自然に行われる文化。 - 院の理念や方向性への共感度
経営方針やビジョンが自分の価値観と一致している実感。 - 評価基準の透明性と公平さ
「何を頑張れば評価されるのか」が明確で、納得感がある。
これらは給与と違い、
他院に移ったからといってすぐに得られるものではなく、そのことをしっかり踏まえる必要があります。
条件以外の価値を作る方法
こうした価値は、自然には育たないはずです。
経営者や管理者が意識して設計する必要があります。
具体的には──
- 1on1面談で成長目標を明確化
「次の半年で何をできるようになるか」を具体的に言語化し、達成のサポートをする。 - チーム単位の評価・表彰制度
個人の数字だけでなく、チーム全体の貢献やサポート力を評価に組み込む。 - 院の方針や理念を共有する定期ミーティング
方向性を全員が理解し、同じゴールに向かって動ける環境を整える。 - 教育担当や役割分担の明文化
責任の所在を明確にし、成長のきっかけをつくる。
こうした取り組みは、短期的なインパクトは小さいかもしれません。
しかし、半年・1年と時間をかけて積み上げることで、
「ここで働く意味」が着実に育っていきます。
定着戦略は採用戦略以上に重要
美容医療業界は今、開業ラッシュや人材流動化で
「求人が常にある」状態が続いています。
そんな環境だからこそ、
条件比較だけでは動かない人材を集め、長く働いてもらうことが生き残りの鍵になるはずです。
「残る理由」は給与や福利厚生よりも、
ここで働く意味を明確にすることで生まれると感じています。
採用戦略と同じ、あるいはそれ以上に、定着戦略は重要。
条件競争に巻き込まれるのではなく、
ここにしかない価値で人が集まり、残る職場をどう作るか──
その設計が、これからの美容医療業界の成長を左右すると感じます。

