美容医療のリアル|症例が広告に変わるとき、私たちの判断軸はどこへ向かうのか

美容医療を、もっとオープンで誠実なものに。
合同会社LAST HOLIDAYの北條渚です。noteでは、施術体験や業界のリアルを隠さず語る場をつくっています。
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目次
- 不安をなくすための写真が、いつの間にか広告になる
- 意識が引っ張られる瞬間に気づく
- 効果あり、の裏にあるもうひとつの意図
- 発信の軸を見る
- 症例と自分の悩みが一致しているか
- 「見る」から「読み解く」へ
美容クリニックを選ぶ際、
多くの人が最初に見るのは症例写真ではないでしょうか。
SNSのビフォーアフター、
クリニックのホームページ、
モニター募集ページ。
どれも変化の証拠として、
わかりやすく私たちの興味を引きつけます。
でも、気づかないうちに
その見せ方に意識が引っ張られていることも多いと感じています。
不安をなくすための写真が、いつの間にか広告になる
もともと症例写真は、
患者さんの不安を減らすために生まれたものでした。
どんな治療なのか、
どんな経過をたどるのか。
そうした情報を可視化することで、
施術を検討する人の安心材料になる。
本来はそんな役割を持っていたはずです。
けれど今では、
SNS投稿やモニター募集を通じて、
症例が集客の中心ツールになっています。
・効果が一目でわかる構図
・痛くない、短時間といった安心ワード
・ナチュラルで自然など共感を誘うキャプション
これらが並ぶ投稿を見ていると、
「私にもできそう」「思っていたより簡単かも」
と感じやすくなるのは自然なこと。
ただその一方で、
いつの間にか判断基準が写真に置き換わってしまうリスクもあります。
意識が引っ張られる瞬間に気づく
私たちは、
写真の中の成功例に惹かれた瞬間、
冷静な判断から少しずつ離れていきます。
この仕上がりが自分にも当てはまるか、
よりも、
この写真みたいになれるかも、と思ってしまう。
けれど、掲載されている症例は
あくまで誰かの治療記録であって、
自分の未来図とは限りません。
ライフスタイル、肌質、体質、
アフターケアの習慣。
同じ施術名でも条件が違えば、
結果もまったく変わります。
効果あり、の裏にあるもうひとつの意図
症例投稿の多くは、
施術ハードルを下げるための工夫がされています。
痛みが少ない、ダウンタイムが短い、
自然でバレない。
そうしたキーワードは、
不安を取り除くことを目的としたもの。
その発信自体が悪いわけではありません。
ただ、来院のきっかけづくりと、
正確な情報提供の境界線が
とても曖昧になっているのも事実です。
効果があったという一部分だけを見てしまうと、
なぜその結果に至ったのか、
どんな条件で行われたのかが置き去りになります。
発信の軸を見る
どんな意図で症例が掲載されているか。
それを見るだけでも、
クリニックの姿勢はある程度わかります。
・リスクや経過まで丁寧に説明されている
・施術のアプローチや使用機器が明確
・得られた結果だけでなく、課題点にも触れている
こうした発信には、
結果だけでなくプロセスも伝えたいという誠実さがにじみます。
反対に、
ビフォーアフターだけが独立して並んでいる場合は、
判断材料が少なく、情報としての信頼性が見えにくいものです。
症例と自分の悩みが一致しているか
受けたい施術名だけで検索しても、
掲載されている人の主訴(悩みの出発点)が
自分と一致しているとは限りません。
たとえば同じしみ治療でも、
紫外線ダメージによるものか、
ホルモンバランスの影響なのかでアプローチは変わります。
似た症例を見つけても、
この人と私は同じ条件ではないかもしれない。
そんな一歩引いた見方を持つことで、
判断の精度はぐっと上がります。
「見る」から「読み解く」へ
症例写真は、美容医療を理解するための貴重な情報です。
でも、綺麗に整った一枚の裏には、
撮影条件や編集、クリニック側の発信の目的など、
さまざまな意図が重なっています。
だからこそ、
どんな症例写真か、ではなく、
どんな姿勢で発信されているかを見てみる。
それが、
結果に満足できるクリニック選びへと
つながっていくのだと思います。

