美容クリニック開業ラッシュの裏側で、なぜ定着率が下がるのか

目次
- なぜ人は育たず、定着しないのか──開業ラッシュの裏側
- 定着率が下がる理由はどこにあるのか
- 働きにくさが離職を招く
- 定着率低下が意味すること
- おわりに
なぜ人は育たず、定着しないのか──開業ラッシュの裏側
ここ数年、美容クリニックの開業ラッシュが続きました。
広告業やエステなど、異業種からの参入も増え、市場は一気に拡大したように見えます。
けれど実際には、開院したものの数年経たずに閉院してしまうケースも少なくありません。
華やかに見える開業ブームの裏で、「人が育たず、定着しない」という深刻な課題が横たわっています。
定着率が下がる理由はどこにあるのか
「待遇は改善されているのに、人が続かない」──これは現場の声でよく聞く違和感です。
その背景には、いくつかの構造的な要因があります。
- 短期回収型のビジネスモデル
開業から早期に投資回収を求めるスタイルでは、人材育成より「即戦力採用+売上至上主義」が優先されがち。
オンライン診療や広告集客など、数字がすぐに見える仕組みに依存し、基盤整備は後回しにされることもあります。 - 医療理解に基づかない投資不足
内装工事を見た目重視で発注し、導線が悪く診療の効率が上がらない。
電子カルテや予約システムへの理解が浅く、導入を渋ることでスタッフの負担が増える。
必要な設備やマーケティングツールが整わず、運用パフォーマンスが発揮できない。 - コンセプト設計の甘さ
ターゲット像や強みの定義が曖昧なまま走り出す。
オーナーが異業種での成功体験に引っ張られ、医療特有の“信頼を積み上げる発想”に切り替えられない。
結果としてスタッフは「何を軸に働けばいいのか」が見えず、やりがいを感じにくい。
働きにくさが離職を招く
こうした要因が重なると、現場は常に「やりにくさ」を抱えたままになります。
・導線の悪さで時間ばかり取られる
・システムが整っておらず、業務が非効率
・方針が曖昧で、自分のキャリアの見通しが立たない
──そんな日常が積み重なれば、待遇が良くても「ここに長くいたい」とは思えなくなります。
定着率低下が意味すること
スタッフが短期で入れ替われば、経験の蓄積はリセットされます。
教育コストは膨らみ、残ったスタッフに負担が集中し、さらに離職を呼ぶ悪循環に。
そして患者にとっても、
「担当がすぐ変わる」
「安心して通えない」
という不信感につながり、業界全体の信頼を損なうリスクがあります。
おわりに
開業ラッシュは市場の盛り上がりを示すようでいて、その裏では「人が育たず、定着しない」構造的な課題が広がっています。
待遇改善だけでは解決できません。
必要なのは、
- 短期回収型モデルに依存しない経営の視点
- 医療理解に基づいた設備・IT投資
- 明確なコンセプト設計と文化づくり
この3つを揃えて初めて、「続けたくなる職場」に近づけるのではないでしょうか。

