クレーム対応マニュアルがスタッフを守ってくれない理由

クレーム対応マニュアル、現場で本当に機能してますか?
美容医療の現場にいると、避けて通れないのが「クレーム対応」。
「もしトラブルがあったらこの手順で」──多くのクリニックにはマニュアルが存在します。
けれど実際に対応してみると、
「結局、守ってくれない」
「マニュアルどおりに動いたのに責められた」
そんな感覚を抱いた人も少なくないはずです。
医療なのに「お客様扱い」という二重構造
美容医療は医療でありながら、自費診療というサービス業の側面も持っています。
この二重構造が、クレーム対応をとても難しくしています。
「患者様」でもあり「お客様」でもある相手に対して、
・医療リスクとして説明すべきなのか
・接遇として謝罪すべきなのか
判断が曖昧になりやすいのです。
マニュアルは存在しても、その場の対応は結局スタッフ個人の裁量に委ねられ、結果「自己責任」にされてしまう現実があります。
マニュアルが拾えない「気持ちの経緯」
そもそもマニュアルは、あくまで対応フローやエスカレーションの線引きを示すものに過ぎません。
しかし、患者一人ひとりには「ここに至るまでの気持ちの変遷」が必ずあります。
その背景には、
・施術前の説明が十分だったか
・違和感を抱いた瞬間を見逃していないか
・スタッフ間での情報共有ができていたか
といった小さなコミュニケーションエラーの積み重ねがあるものです。
必要なのは、寄り添う姿勢をどう伝えるかという部分。
謝罪を求めているのか、返金を望んでいるのか、あるいは安心できる説明がほしいのか。
相手が本当に求めているものを見誤ると、かえって事態を深刻化させてしまうことすらあります。
現場が疲弊する構造
では、なぜ「マニュアルがあっても守られない」と感じるのでしょうか。
- 責任の所在が曖昧
医師?カウンセラー?運営?最終的に誰が責任を負うのかが不明確。 - 接遇スキルへの過度な依存
本来は医療リスク管理の視点が必要なケースでも、「笑顔と工夫でお詫びしてなんとかして」と丸投げされる。 - SNS・口コミ時代のプレッシャー
「低評価を書かれたら困る」という理由で、組織が守るよりも場当たり的な鎮静化が優先される。
こうしてマニュアルは形骸化し、スタッフの心理的安全性は奪われていきます。
「守られていない」と感じる理由
スタッフが一番つらいのは、「自分が盾にされている」という感覚です。
数字や評判を優先するあまり、組織が個人を切り捨てているように見えてしまう。
本来なら、
・医療リスクは医師が判断する
・接遇面は組織で支える
といった線引きが必要なのに、現場は「とりあえず現場でなんとかして」で回され続けている可能性もあります。
現場リーダー職への心理的負担が大きいため、ひいては退職へと、やる気のモチベーションの維持にかかわってしまうのです。
まとめ
美容医療のクレーム対応において、マニュアルだけではスタッフを守れません。
必要なのは、
- 「誰がどこまで責任を負うのか」の明確化
- 「組織として守る仕組み」の整備
- そして、患者の気持ちの経緯に沿ったコミュニケーション
接遇スキルに頼るのではなく、医療リスク管理の枠組みで仕組みを見直すことが欠かせません。
次回は、この延長線として
「VIP対応がスタッフを疲弊させる理由」
について掘り下げていきます。

